研究概要 |
無限次元Banach空間における半線形発展方程式に対する不変多様体(中心安定多様体、中心不安定多様体)の理論の改良を行った。正確には、X,Y,ZをBanach空間とし、XとYはZに連続的に埋め込まれているとする。{T(t)}をZ上のC_0半群とし、F:R×X→Yは各tに対して、F(t,・)はC^1級で、F(t,0)=0,DF(t,0)=0とする。このとき、{T(t)}に対する適当なスペクトル分割条件の下で、時間に依存する半線形発展方程式u(t)=T(t)x_0+∫^t_oT(t-s)u(s)dsは原点のまわりで、C^1級の有限次元局所不変多様体を持つことを証明した。 さらに、この結果を、非有界領域上の非線形放物型偏微分方程式u_t=Δu+F(u,∇u)の漸近解析の研究に適用する試みを行った。有界領域上の偏微分方程式に対しては、その線形化された方程式が離散スペクトルのみ持つので、有限次元のときと同様な議論を行うことにより不変多様体の存在は知られているが、非有界領域上の方程式に対してはその線形化された方程式は連続スペクトルのみあらわれ、スペクトルのギャップがないので有限次元のときの様な議論は成り立たない。この問題に対して、これまでは重みつきのL^2型Sobolev空間の枠内で扱われていたが、L^p型Sobolev空間で扱った。これにより、漸近挙動についてより精密な結果を得た。今後の研究として、この手法をSwift-Hohenberg方程式の周期解に対する非線形安定性問題の研究やSchrodinger方程式、Korteweg-Vries方程式などの分散型方程式の漸近挙動の研究に適用し、これらの問題に新しい切り口を与えたい。
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