研究概要 |
Conley index理論をslow-fast系と呼ばれる特異摂動的ベクトル場に対して拡張し,それをある種の力学系の複雑な振舞いの解析に応用した.この研究は,力学系の大域的な構造とその分岐を位相的に調べる上で有効なConley indexの理論を,slow-fast系と呼ばれる特異摂動的ベクトル場に対して拡張する一連の研究の一部であり,Conley自身に始まる研究の流れを引くものであるが,ここではこれまでに得られた理論の応用として,ゆっくりと変化する平面上のハミルトン系における複雑な振舞いの解析に用い,その具体的な問題に応用して有用性を示した.今後はこれをより一般の遅い変数が2次元以上の場合に拡張することが課題となるが,その研究もほぼ完成し,目下,論文にまとめつつある段階となっている. これとは別に,1次元写像のカオスを位相的方法を計算機による計算と組み合わせて数学的に厳密な取り扱いをすることを試み始めているが,その1つの成果として,写像の臨界点の近傍の外での写像の反復合成による微分の拡大率を,重み付き有向グラフ上の最小平均重みの評価を与えるアルゴリズムを用いることにより判定できることを示した.これは1次元写像のカオスの判定の重要な1ステップであり,今後は臨界点の振る舞いを調べることになる.
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