研究概要 |
繰り込み群の微分方程式での応用としては解の長時間時間発展,パターンやウェーブフロントの形成,流体方程式の乱流の生成などの問題が典型的対象として上げられるが,我々の努力にも関わらずこの方面では多くの未解決の問題が残った.繰り込み群法は統計力学,力学系では強力な計算法であって,この方法を数学的にいろいろな側面から研究し,その基本的原則を確立し応用分野を広げることは重大な意味をもつ.この面において,低次元スピン系の相転移問題においていくつかの重大な知見を得ることが出来,またこのモデルに適した段階的block spin変換法の開発など将来的発展につながる幾つかの成果があった. (1) 池部,島田は球面上にδ関数的potential V(x)=μf(x)δ(x^2-a^2)が有るときのSchroedinger作用素はμ→±∞でresolvent収束することを証明した.これは原子のα崩壊に関係している.さらに島田は量子力学の基本的現象である,Aharonov-Bohm効果をSchroedinger作用素の視点から研究し,固有関数展開定理を確立した.これを用いて時間依存の散乱理論と時間に依存しない定常的散乱理論を結び付けた. (2) 寺本は円柱の回りの非圧縮性粘性流体の流れを円柱座標を用いて分析,初期値が定常解に十分近ければ時間的大城解の存在を証明した.さらに寺本-伊東は乱流の性質,特にエネルギーの散逸に関するKolmogorov則とそれからのづれをNavier-Stokes方程式から繰り込み群に基づいて導出しようとした.しかしこの方面では期間中にめぼしい結果は出なかった. (3) 伊東は金沢大学の田村助教授とともにO(N)古典スピン系の繰り込み群による分析おこなった.第一段階としでこの系がrandom walks(乱歩)で表現できることから,さらにself-avoiding walkにまで改良されることを示した.第2段階としてモデルから得られる関数行列式det^<-N/2>(1+iGψ/√N),G=(一Δ+m^2)^<-1>,のψに関する可積分性を論じた.これによって2次元に於いて,O(N)spinモデルの臨界逆温度βc=T^<-1>_cに対して,βc>NlogNの形のdeviationの存在を確立した.
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