研究分担者 |
渡会 征三 摂南大学, 工学部, 助教授 (20131500)
中脇 雄治 摂南大学, 工学部, 教授 (60207959)
伊東 恵一 摂南大学, 工学部, 教授 (50268489)
島田 伸一 摂南大学, 工学部, 助教授 (40196481)
寺本 恵昭 摂南大学, 工学部, 助教授 (40237011)
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研究概要 |
変数のスケール変換により微分方程式で記述される物理系の特徴的性質を把握することが、微分方程式に繰り込み群の手法を導入する一つの目的である.この基盤研究(C)(2)では主として古典スピン系,ナビエ=ストークス方程式の分岐問題,量子力学の散乱問題,ゲージ場の量子化などをとりあげた.繰り込み群の手法が早くから取り入れられ発展をとげてきたスピン系の研究では,いくつかの成果を上げることができた.他の分野についても従来の関数解析的方法により一定の成果を上げているが,繰り込み群の手法により解のより詳しい漸近的性質を把握する段階には到達しておらず,この手法の数学的基礎付けを確立し応用分野を広げることがこれからの目標となろう. (1)伊東は金沢大学の田村助教授との共同研究において,低次元O(N)スピンモデルの相転移問題に新たな知見を加えることができた.これらのモデルでは相転移は起こらないと信じられているが,その厳密な証明は未だにない.伊東-田村は多段の繰り込み変換を用いて臨界逆温度の評価の改良に成功した. (2)寺本は斜面流のパルス状の解を分岐理論により捉えるため,ナビエ=ストークス方程式の自由表面問題を数学的の定式化し,対応する線形化問題の作用素が或る関数空間で解析的半群を生成することを示した.パルス解の相互作用を統計力学的に記述し乱流への遷移を解明することを伊東と構想している. (3)中脇のゲージ場研究に現れるantiderivativesの発散の困難も繰り込み群との関連付けが期待される. (4)島田は量子力学に現れるAharonov-Bohm効果の説明に用いられた作用素をスペクトル散乱理論の視点から数学的に詳しく解析した.この作用素の自己共役拡張をすべて決定することにより固有関数を完全に決めることができて,波動作用素,散乱行列,散乱振幅の表現が可能になり,Aharonov-Bohm効果の厳密な数学的説明が得られたことになる.
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