1. 本研究課題初年度にあたり、主として、重力多体シミュレーション・コードおよび結果を解析するコードの開発を行い、それらの試験計算を行った。備品として購入したコンピュータでは、既存の重力専用計算機用(GRAPE)のコードがそのまま使用できないので、重力の計算にツリー・コードを用いた、汎用性の高いシミュレーション・コードに改造した。各種のテスト計算を行った結果、予想に近い効率で計算することが確かめられた。 2. SPH法により、ガスの流れを計算するコードの開発を始めた。 3. シミュレーションの結果を解析するコードの開発を始めた。 4. 初期条件を生成するコードを整備した。シミュレーションは、CDM(Cold Dark Matter)モデルによる宇宙の物質分布から、銀河スケールの部分を取り出して、その時間発展を追跡する。そこで、初期条件として、与えられた密度の銀河スケールの球を考え、そこに、CDMモデルから期待される密度揺らぎを持った粒子分布を生成する。さらに、与えられた回転パラメータに対応する回転速度を各粒子に与える。 5. 銀河形成の試験的シミュレーションを行った.その結果、円盤銀河の形成において、とり残された分裂片、あるいは、衛星銀河が銀河円盤に衝突あるいは降着・合体するときに、円盤の構造形成過程が大きな影響を受けることがわかった。また、回転パラメータの特に大きな系(初期の密度揺らぎ)は、全体として収縮する前に、数個の分裂片の集団を作り、その集団の性質は、観測されている密集銀河群に良く一致することがわかった。
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