1.冷たい暗黒物質の宇宙モデルのシミュレーションの結果をもとに、衛星銀河が母銀河に与える影響を調べた。冷たい暗黒物質の宇宙モデルでは、銀河系サイズの銀河の周辺には小さな衛星銀河がたくさん作られる。しかし、その総質量は小さいので、母銀河の基本構造の形成にはあまり影響を与えないと考えられる。もし、大きな衛星銀河が形成されて・それが母銀河と合体する場合には、バルジが大きくなる。そのような銀河からガスが失われれば・SO銀河的な構造が期待される。2.衛星銀河の詳しい観測情報は局部銀河群(銀河系とM31)についてしか得られないが・銀河系やM31周辺に観測されている衛星銀河(矮小銀河)の数は冷たい暗黒物質の宇宙モデルから予想される数よりはるかに少ないので、その理由を考える必要がある。3.個々の衛星銀河のモデルとして、小質量の銀河を考え、その形成過程のシミュレーションを行った。小質量の銀河においても冷却崩壊が起こり、中心にガスが著しく集中する傾向が見られた。また、小質量の銀河では、星生成の効率とそのフィードバック効果の大きさによって・ガスの振る舞いや銀河の進化が大きく変わる。通常の星形成率とフィードバックでは、著しいガスの放出が起こり、かなりのガスが銀河から失われる。星生成率やフィードバックを小さくするとガスが残るが・冷却崩壊によって、銀河の中心部への著しいガスの集中が起こる。4.今後は、質量の小さい銀河の形成過程と進化のシミュレーションを行い、衛星銀河(倭小銀河)の形成過程や進化が母銀河によってどのような影響を受けるか、また、衛星銀河の性質と母銀河との関係について詳しく調べたい。
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