研究概要 |
一般に、矮新星は典型的には数10日に一回の割合で数等級の爆発を繰り返す激変星の一種である。矯新星の爆発の原因としては,当研究代表者が1974年に提案した「降着円盤の不安定性モデル」が現在世界的に広く受け入れられている。しかし観測的には矮新星の爆発の光度曲線にはいろいろのバライティがあり,これらすべてを「円盤不安定性モデル」により統一的に理解しようというのが,本研究の目的である。 平成10年度の研究としては,矮新星の静穏時におけるX線放射の問題に取り組んだことである。代表的な矮新星であるはくちょう座SS星では、静穏時に硬X線を放射していることが知られている。矮新星の静穏時における硬X線放射機構であるが、現在広く受け入れられているモデルは以下のようなものである。即ち,降着円盤の内縁が白色矮星と接するところに、境界層が出来る。境界層の密度が低い場合,境界層の中での強いシアーによる摩擦熱により熱不安定性を起こし、境界層は高温になり、白色矮星を球状に取り囲みコロナになり、その高温コロナから硬X線が放射されるというものである。 しかし、このような白色矮星を取り巻くコロナについての詳しい計算はまだ行われていない。特に高温コロナからはコロナ風が吹き出すことが期待されるが、コロナ風を考慮したモデルは存在しない。本研究ではコロナ風による質量放出も考慮したコロナのモデルを作り、それに基づいてX線のスペクトルを計算した。また、激変星が食連星である場合の、X線の食の光度曲線を計算し、矮新星カシオペア座HT星の観測と比較した。その結果、本研究で得られたX線光度曲線は観測をよく再現することがわかった。
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