研究概要 |
本年度は,連星中性子星の合体とその際に放射される重力波を詳しく調べるための数値シミュレーションコードの開発を進めた。前年度までのコードから改良した主な点は次の通りである。 1.双曲型偏微分方程式である計量テンソルの時間発展方程式の数値解法にCIP法を適用する。CIP法の実装は特に困難ではなかったが,必要なメモリーが約3倍に増大した。 2.数値境界における境界条件として波動条件を適用するとともに,数値境界を十分外に持っていくことにより,数値境界における重力波の反射を押さえる。 3.重力波の波形を取り出す。現在のコードで用いている座標条件では,星から十分離れたところで,計量テンソルをバックグラウンドと重力波成分に分離することは容易であるため,様々の方向から観測した場合の重力波波形を求めることができた。 これらの改良は,十分機能し,連星中性子星が合体して1つの星になり始めるまでの過程を追うことが可能となった。合体が進むにつれて,中心の星に対する解像度が悪くなるため,数値計算が不安定になることが明らかになった。これを解決するためには,より細かい数値グリッドを用いるとともに,座標条件の改良が必要であり,計算結果の詳しい解析とともに,これについては次年度の課題とする。 さらに,これまでの数値計算結果を可視化するためのプログラムをOpenGLを用いて作成し,星の密度分布の時間発展と重力波の放射の様子を解析するための動画を作成た。これらの成果は,World Wide Web(URL:http://astro.sc.niigata-u.ac.jp/oohara/ykis99/)を通じて公表した。
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