研究概要 |
これまでの3年間の研究により,連星中性子星の合体とその際に放射される重力波を詳しく調べるための数値シミュレーション・コードの開発を行い,基本的に安定で十分よいな精度で計算を進めることができるコードが完成した。コードの基本的な構成は以下のとおりである。 ・座標条件としては,空間座標に関してはpseudo-mininal distortion条件を用いた。時間座標に関しては,当初,conformal slicing条件を用いたが基本的に不安定なモードが発生することが判明したため,maximal slicing条件に変更することにより安定化をはかり成功した。 ・時間発展の各ステップで,lapse関数,shift vector,conformal factorを決めるために合計で6個の楕円型方程式を解く必要があるが,これについては,並列化が可能な前処理つき共役勾配法を用いた。これは,完全に並列化およびベクトル化が可能であるが,計算機によっては,load/storeと演算量のバランスの関係で,十分な計算速度を得るには高度なチューニングが必要であることが明らかになった。 ・流体の時間発展方程式はTVD化されたvan Leer法を用い,計量テンソルの時間発展方程式はCIP法を用いて解いた。 ・放射される重力波を求めるには,ゲージ不変量を用いた計算が必要であるが,これについては,まだ完成していない。しかし,maximal slicing条件でも,conformal slicing条件を用いた計算との比較から,単純な計算法により,十分な精度で計算可能であることが明らかになった. この研究期間中には,スーパーコンピュータの能力の問題で,十分大きなサイズでの計算ができなかったため,連星中性子星の合体に関して高精度の計算結果を出せなかったが,今後,国立天文台や高エネルギー加速器研究機構の新スーパーコンピュータを用いて物理的な結果を得ることが可能なコードの完成に至っている。
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