研究概要 |
われわれは、重力マイクロレンズを用いて活動銀河核(クェーサー)の中心構造を観測的に分解するという、画期的な方法について研究を続けている。アインシュタインクロスとよばれる天体Q2237+0305は、遠方(z=1.69)のクェーサーが近傍の銀河(z=0.04)による重力(マクロ)レンズをうけた結果、四つの像が十字形に並んで観測されている。このクェーサー像の中心の前を、レンズ銀河の中の星が通過すれば、クェーサー中心のごく狭い領域からの光のみが選択的に増幅される。このようなマイクロレンズ現象がすでに複数回観測されている。 われわれはまず、マイクロレンズにより期待される多波長域強度変化を現実的な降着流モデルを用いて計算し、次いで降着流モデルを仮定しないで、観測データから直接、円盤の輻射特性を求める方法の定式化をおこなった。アインシュタインクロスのばあい、0.02等以下の精度の観測を3日おき程度の頻度で観測すれば、数天文単位単位の放射特性が明らかにされることをシミュレーションにより確認した(Mineshinge & Yonehara1999出版済み)。この手法は近々予定されているChandra衛星によるX線観測に応用される。またここ数カ月、アインシュタインクロスは奇妙な時間変動を示しているが、この変動をマイクロレンズモデルで再現し、ソースの広がりを求める研究は現在進行中である。 さらに系内ジェットソースや狭輝線セィファートI型銀河など、エディントン光度近くで光っている系の基本構造を新しく現実的な過程を考慮して計算し、X線観測諸量を再現することにも成功した(Watarai et al.2000,Mineshige et al.2000)。以上の結果はドイツで開かれた会議で発表され、注目を浴びた。
|