(1)地上観測。(i)国立天文台堂平観測所の多色偏光測光装置を用いて、平成11年11月に小惑星(216Kleopatra)、平成12年1月に小惑星(532Heculina)の測光・偏光の同時観測を実施した。今回は、低分散分光偏光装置(HBS)を始めて使用して、波長400nmから800nm付近にかけての分光偏光観測を行った。測光は、同架台の小型望遠鏡で同時観測した。偏光と測光データに、有為な時間変動がみつかった。偏光の波長依存性や、偏光・測光の自転周期との相関から、小惑星の形状・自転軸や、表面の鉱物分布につての解析を進めている。(ii)冷却CCDカメラによる地上観測によって、小惑星を起源とする惑星間塵雲の空間構造に見られる局所的な集積を引き続き調べた。 (2)室内での光散乱実験を実施した。今年度は、(i)隕石を細粒にした試料を用意し、散乱光強度を広い位相角範囲(3度〜155度)で調べた。特に、これまでに地上実験でデータが得られていなかった高位相角(>120度)でのデータを初めて得ることができ、探査機による小惑星表面の観測データと詳しい比較検討が行うことができた。(ii)表面の粗さについてミクロンオーダーの3次元測定を行い、光散乱特性と表面粗さとの関係について、考察を行っている。 (3)理論的考察のために、Hapkeの散乱理論に基づいて、小惑星の模擬表面における光散乱の数値シミュレーションを実施した。小惑星探査計画MUSES-Cの画像処理に必要な基礎過程の検討を、引き続き行っている。
|