降着円盤とは、白色わい星、中性子星、ブラックホールなど、いわゆるコンパクト天体の周りにできたガスの円盤である。本研究では近接連星系に存在する降着円盤の3次元数値流体力学シミュレーションを行った。計算法は有限体積法で、リーマン解法としてSFS法を採用した。計算領域は、質量降着が起こっている主星とガスを供給している伴星を含む。ガスの状態方程式としては、完全気体のそれを採用した。その結果、ラグランジュL1点から流れ出したガス(L1流)は、採用したパラメターの範囲では、円盤に貫入することが分かった。貫入したガスに、公転している円盤ガスが衝突して、細長い衝撃波を形成することが分かった。これをわれわれはL1衝撃波と名付けた。それとともに、すでに我々が発見していた渦状の衝撃波も見いだされた。L1衝撃波のために、円盤ガスは角運動量を失い、中心星に落下する。我々は従来、渦状衝撃波による角運動量輸送機構を提案してきたが、その大きさは必ずしも十分でなかった。本研究で見いだしたL1衝撃波による角運動量損失は十分に大きいことが分かった。1997年になって英国の天文学者が、激変星ペガサス座IP星において、予言通りの渦状構造を発見して以来、渦状衝撃波モデルは世界の注目を浴びるようになった。またL1流の貫入現象も最近発見された。 上記の計算の問題点は、輻射輸送による冷却が陽に考慮されていないことである。かわりにガスの比熱比γを断熱気体の5/3から1.01に下げることにより、その効果を代替した。われわれは今後、有限体積法ではなく、モンテカルロ直接法による数値シミュレーションを計画している。そして2次元の場合には予備的な結果を得ている。さらに計算を3次元に拡張して、熱伝導を陽的に解くことにより、輻射輸送をシミュレートすることを考えている。
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