研究概要 |
SS433でみられる宇宙ジェットの構造と放射について研究を行い、次のようなことを明らかにすることができた。 (1) ジェットの速度を一定と仮定すると、エネルギーの式は解析的に解ける。外側は一温度で透明なジェットであるが、内側に移るにつれ2温度でコンプトン散乱に対し不透明なジェットとなる。解の性質は無次元のパラメーター(断熱冷却の時間と放射冷却の時間の比)によってきまる。 (2) 速度一定の近似は音速点までは許されるであろう。音速点の位置は中心天体から約2x10^∧(10)cmあたりである。音速点での自由落下速度はジェットの速度に比べ、大変に小さい。したがって、ジェットのガス圧による加速の可能性はないといえる。 (3) ジェットの内側の部分は不透明であるので、光子が外からジェット内に入れない。したがって、輻射による加速の可能性も除外される。 (4) 音速点より外側の領域から放射されるエネルギーは ^-4x10^∧(39)erg/sにもなり、観測されているX線光度を約3桁も上回る。したがって、この放射エネルギーを隠すものが必要である。 (5) 磁気圧による加速が可能性として残る。磁気圧による加速では、工藤&柴田(APJ,1997)によれば、ジェットの最終速度はジェットの根元あたりのケプラー速度で与えられる。するとSS433の場合、ジェットの根元は中心天体のすぐそば(^-10^∧(6)cm)ということになる。また、音速点での温度(4x10^∧(11)K)は、高密度星のまわりで実現可能な最高温度に近い。根元から音速点までのジェットの形状や温度、密度は断熱冷却や放射冷却が効かないようなものでなければならない。
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