連星系あるいは銀河中心核にあるブラックホールは降着円盤に囲まれている。そしてこの降着円盤からジェットが吹き出ることもある。その観測例がSS433やブレーザーのジェットではないかと考えられている。最近、ASCA衛星のX線観測により、SS433の観測的研究が著しい進展をみせている。このような状況に接し、SS433のジェットの構造や放射が本研究の中心課題となった。主な研究成果は以下のようなものである。 1.ジェットの速度を一定と仮定したとき、ジェットの温度分布ついて解析解を導くことができた。この解析解によれば、ジェットの外側は一温度(電子とイオンが同じ温度)で光学的に透明な構造になるが、内側に移るにつれ二温度(電子とイオンが異なる温度)でコンプトン散乱に対し、不透明な構造となる。 2.ジェットの形状は、中心天体の近くでは円錐状、遠方ではその断面積が中心天体からの距離に比例するようなものが適当である。 3.中心天体から音速点までの距離は〜9×10^7cmである。音速点での自由落下速度はジェットの速度に比べ小さい。したがって、ジェットのガス圧による加速の可能性はないといえる。 4.ジェットの内側の部分は不透明であるので輻射圧による加速の可能性も除外される。 5.音速点の外側から放射されるガンマ線の光度は〜10^<39>erg/sにも達する。このガンマ線が検出されていないことから、ジェットの内部は幾何学的に厚い円盤で覆われていると考えられる。 以上の研究成果には、本研究の途中で病死した蓬茨霊運の寄与も含まれている。
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