研究概要 |
本研究では、画期的に観測効率を向上させた25SISマルチビーム受信機観測システムを用いることで、星形成の初期段階の重要な現場である高密度分子雲コアが、どのように形成され、またどのように進化をしていくのかについてを解明することを目的としている。今年度の研究の達成目的は,本格的な観測を前に研究遂行の鍵を握るハード・ソフトの環境を開発する事であった。 具体的には,観測装置の中心である25SISマルチビーム受信機システムに対して,より能力を発揮できるよう修正及び改良を加え,装置の整備をはかる。未経験のデータ量を取り扱うための環境整備及び解析ソフトを開発・評価するという2つの大きな開発項目を計画した。前者については,様々な観点からの性能測定実験を繰り返すことで性能の均一性を追求し,システム雑音温度平均180Kで±20K程度のばらつきという均一性を達成した。また,装置の大型化による複雑さに対応するためシステムの自動調整システムを完成させた。後者に関しては,スペクトルデータとして取り扱う形式を改め,3次元キューブデータとして取り扱うこととし,3次元キューブデータの解析ツールの基本的枠組みを完成させた。 解析ソフトも含めたシステム全体の能力を評価試験するために,活発な星形成が行われているオリオン巨大分子雲領域の試験観測を行った。総観測時間がたった25時間程度の短い時間にも関わらず,10'x45'という広大な範囲を20″グリッド・rms70mKで観測出来ることを示せた。これは従来の観測システムでは200時間もかかる観測に相当する。さらに,このような短時間に得られる大量データも開発を進めた解析ツールによりスムーズに解析できることも確認できた。これらの点に関しては,日本天文学会春季年会にて公表予定である。
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