本研究は、電波望遠鏡で晩期型星からの一酸化珪素のメーザー輝線を検出することにより、我々の銀河系中心部での恒星の運動を調べ、銀河中心ブラックホール周辺の環境と物理を明らかにするものである。本年度は以下の3つを実施した。(1)野辺山45m電波望遠鏡による銀河系中心部の一酸化珪素メーザー源の探索を行った。約200個の色選別されたIRAS天体の一酸化珪素のメーザー輝線の検出を行い、その視線速度を得た。また、銀河中心領域の赤外線源について、一酸化珪素のメーザー輝線による観測を実施した。視線速度を得ることにより、同じ方向のガス成分の視線速度から大きくずれた星の存在が明らかになった。(2)サイディングスプリング天文台2.3m望遠鏡を用いた撮像測光観測を行った。およそ250個の天体について、近赤外(J、H、K)イメージデーターを得た。そのうち、銀河面の一部分のデーターについて、赤外線での絶対光度を決定し、その色から距離を求めた。銀河回転から大きくはずれた運動成分を持つ星は、太陽からおよそ5.5kpcの距離に集中していることが明らかになった。これらの星は、銀河の棒状構造の中の流れ、あるいは、速度分散の大きいバルジの星である可能性の高いことが解った。(3)高速パーソナルコンピューター、および、画像処理ソフトウエアを購入し、近赤外イメージデーター処理を行った。出口は、主として、観測計画の作成、赤外線撮像データーを解析、また研究を統括、三好は電波スペクトルデーター及び超長基線干渉計のデーターの解析を行った。画像データーの整約のため、アルバイト学生を使って、初歩的データー制約を行わせた。
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