宇宙線の伝播を解析することにより、銀河磁場の構造を明らかにすることを目的に、以下の二つの方向からのアプローチを試みて、結果を得ることが出来た。 ・拡散方程式の拡散係数に磁場の空間不均一性からの寄与をとりいれて、銀河円盤と銀河ハローの二つの部分をもつ銀河での境界条件で方程式を解いた。この解は初めて得られたものである。この結果を利用し、宇宙線エネルギースペクトルの10^<15>eV近辺の折れ曲がりの巾の差から銀河ハローの磁場とそのサイズの間に関係をつけることが出来た。したがって、銀河ハローのサイズを決めればハローでの磁場を推定できる。 ・磁場による散乱のエネルギー依存性をもつ簡単なモデルを作り、その散乱を受けながら宇宙線が銀河内を伝播していくというRandom Walkを擬した描像のもとで解析を行った。銀河から宇宙線が洩れ出すまでの平均距離を求め、これをLeaky Boxモデルと比較して散乱の平均間隔を決定できる。 この二つのアプローチは銀河磁場構造を明らかにしていく上で互いに相補的であり、乱れた磁場による散乱をさらに解析して、銀河磁場構造をより明らかにしていく予定である。 これらは私の指導のもとで、それぞれ修士論文「非一様銀河磁場丙での宇宙線伝播」と「Random Walk Modelによる銀河ハローを含む銀河系内宇宙線の伝播」にまとめられ、前者の修士論文作成者は、国立天文台の博士課程に進学した。これらの結果は学術雑誌に投稿予定である。
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