低次元空間の位相的性質の特殊性に起因する不可思議な現象が存在する。例えば、平面電子は磁場中で磁束と結合してポーズ粒子に転換され単独で凝縮可能になる。具体的には量子ホール状態は単独電子の凝縮状態と考えられる。この結果、量子ホール系には巨視的コヒーレンスが発生し一般に位相的励起が存在する。このような系を取り扱うには共形場理論が最適である。 第一の研究成果として、スピン自由度を導入した時、昨年度提唱した改良複合ボソン理論に立脚してスピン・コヒーレンスが発生する事を示した。この様なコヒーレンス系に存在する位相的励起はスカーミオンである。元来、スカーミオンは核子を記述するため導入されたO(4)内部対称性をもつ非可換位相的励起であるが、量子ホール系ではO(3)スピン対称性を持つ。 第二に、上記の解析を2層量子ホール系に拡張し新しい成果を得た。2層の自由度を擬スピンと呼ぶ。スピンと擬スピンの自由度がコヒーレントに絡み合ってSU(4)の自由度が実現し、その励起はSU(4)スカーミオンであることを改良複合ボソン理論に立脚して示した。 第三の研究成果として、以上の理論的成果を検証するための実験を行った。実験は東北大学理学部超低温研究施設・同大学電気通信研究所高速知能システム研究施設およびNTT基礎研究所と共同で行った。2層系でSU(4)スカーミオンが存在する傍証を得た。又、2層系で層間コヒーレンスが存在する傍証も得た。 以上の研究成果は6編の国際的に著名な専門誌に発表し、又、3つの国際会議で発表した。特に、2000年アメリカ物理学会で招待講演を行った。
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