研究概要 |
Wilson型クォーク作用に基づく有限温度量子色力学の研究を継続した。本計画では、連続極限への収束が早くなるように、繰り込み群により改善されたグルオン作用と、所謂クローバークォーク作用を用いている。主要な結果は以下のとおりである。 1.(β,κ)面上での有限温度相構造について、パリティが自発的に破れた青木相の存在とその領域境界を決定した。相転移温度及びカイラルオーダーパラメータのスケーリング則の検討を行い、転移温度としてT【approximately equal】160MeV、臨界指数に対して概ね期待されるO(4)予測との一致を見た。 2.クォーク・グルオン・プラズマの物理特性の決定には、エネルギー密度・圧力などの熱力学量が重要である。平成10年度より行ってきた純グルオン系の積分法による計算を完成させ、標準的な作用を用いて得られた結果と連続極限において約3%の計算誤差の範囲で完全に一致する結果を得た。 3.クォークを含む場合について積分法を用いるため、8^3×4格子を用いた準備計算を行い、(β,κ)面上での最適な積分路を決定した。続いて16^3×4格子を用いた本格計算を行い、m_π/m_p【approximately equal】0.65-0.95に対応するクォーク質量領域で、圧力及びエネルギー密度を温度及びクォーク質量の関数として求めた。結果はクォーク質量にはあまり依らない 来年度は以上のN_t=4の結果をN_t=6へ拡張し、両者から連続極限を求める予定である。
|