研究概要 |
1.量子色力学におけるクォーク閉じ込めを,磁気単極子の凝縮による双対超伝導体の描像で理解するために、ゲージ理論の新しい再定式化を提唱した(位相的場の理論の摂動的変形と呼ぶ)。位相的配位として磁気単極子を最大可換ゲージ固定項として取り込むと、次元低下により4次元のゲージ固定項が2次元の非線形シグマ模型に帰着することを示した。 2.非可換群のLie代数に値を持つ1形式に対する非可換ストークスの定理は、幾つかの型に分類できるが、双対超伝導体の描像に最も適切と思われるのがDiakonovとPetrovによって与えられたバージョンであるが、従来、群がSU(2)の場合にしか知られていなかった。実際の量子色力学に適用すべく、我々はSU(3)の場合に、更にはSU(N)の場合に拡張できることを示し、具体的な表示を与えることに成功した。これによって、クォーク閉じ込めの判定基準としてのウイルソンループを磁気単極子のカレントを用いて書き直すことに成功した。これは、クォーク閉じ込めにおける磁気単極子の効果を考える上で極めて重要である。 3.位相的場の理論の摂動的変形の再定式化の範囲で、非可換ストークスの定理を用いて,ウイルソンループの面積則をインスタントン計算とラージNの方法を用いて導出した。これは,量子色力学におけるクォーク閉じ込めを意味する。 4.非線形なゲージ固定である最大可換ゲージに繰り込み可能性を要求すると必然的に4体のゴースト相互作用が必要になる。その結果,ゴーストと反ゴーストの凝縮が起こり、非対角のグルーオンとゴーストが質量を獲得することを示した。これは、通常のヒッグス機構とは異なる質量生成の機構が量子色力学で起こっていることを示唆する。さらに、可換ゲージの下では低エネルギーでは可換成分が支配的な寄与をなすというアーベリアンドミナンスという現象が数値実験では知られているが、これに初めて理論的裏付けを与えた。
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