平成8年4月よりスーパーカミオカンデ実験が開始し、太陽ニュートリノの線束とエネルギー分布の精密観測を行なっている。本研究は、6.5メガ電子ボルト以下の領域のエネルギー分布を詳細に解析することにより、ニュートリノ振動を確定することを目的としている。本年度は、平成11年9月に実施した5.0メガ電子ボルトにおけるデータ収集効率が100%のデータを用い、観測装置内の放射性元素バックグラウンドの特性研究、およびバックグラウンドの除去効率を向上したソフトウエアの開発を行なった。注水純水中のウラン系列の^<222>Rn量は、観測された事象数から10mBq/m^3と得ている。しかし、今回の解析から実際にはトリウム系列の^<208>TIの崩壊事象が30ないし50%を占めていることがわかった。また、昨年度に開発したノイズ除去ソフトウエアを施したデータを詳しく解析した結果、更に30%程の放射性元素起源ではないノイズ事象が存在することが判明した。そこで、事象の発生点の確からしさ(goodness)の空間的分布を詳しく分析すると、発生点との距離とgoodnessに相関があることがわかった。従って、ソフトウエアを再調整しデータに処理を施した結果、ほぼ残存していたノイズ事象は全て排除することに成功した。現在、平成9年5月から平成11年10月までデータを再解析中であり、また統計量を増やす必要があるため最終結果は得られなかったが、低エネルギー領域の分布は太陽標準模型の予想値に対し5.5-6.0MeVおよび6.0-6.5MeVともに0.45倍との予備的結果を得ている。これから、統計的に弱い議論ではあるが、ニュートリノ振動で許容される解の混合角の小さい領域はデータと合わない可能性があるという結果を得た。
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