私は、石橋、川合、土屋氏と共同して超弦理論の非摂動論的定式化であるIIB行列模型を提唱した。本年度は、当行列模型の理解を深めるために、非可換行列からなる古典解の周りに模型を展開し、その結果得られた理論の研究を行った。IIB行列模型の基本力学変数はHermite行列であり、その固有値を時空の座標と解釈する。よって非可換行列からなる古典解は、非可換時空と解釈される。非可換時空上に定義された場の理論は、非可換場の理論と呼ばれるが、この様にしてIIB行列模型を非可換行列の周りで展開することによって、非可換場の理論が得られる事が明らかとなった。 行列変数の場の理論のファインマン図形は、特定のトポロジーの二次元面と一対一に対応する。行列変数の場の理論のI/N展開は、二次元面のトポロジーカル展開と一致する。行列模型が、弦理論で記述されるとすれば、トポロジーカル展開の展開定数は、弦理論の結合定数と同一視される。非可換ゲージ理論の摂動展開を解析することによって、高エネルギー領域ではプラーナー図形のみが寄与し、低エネルギー領域では総てのトポロジーの図形が寄与することが明らかになった。この事実は、対応する弦理論の結合定数がエネルギーとともに変化すると理解できたことを指摘した。更に超重力理論の古典解の振る舞いと一致する事を見い出した。非可換ゲージ理論の開眼的自由度を積分することによって重力相互作用が得られる事を示した。
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