軽い不安定核の励起機構および不安定核を用いた反応の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10640255
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 鈴木 宜之 新潟大学, 理学部, 教授 (70018670)
• 研究分担者: 小川 洋子 大阪大学, 理学部・付属原子核実験施設, 講師(研究機関研究員 ; 金子 恒雄 新潟大学, 大学院櫟然科学研究科, 教授 (90018664) ; 矢花 一浩 新潟大学, 大学院自然科学研究科, 助教授 (70192789)
• キーワード: 確率論的変分法 / 不安定核 / ハロー構造 / 共鳴群の方法

研究概要

少数粒子系の精密変分計算法を進展させた。回転運動を記述する軌道部分の表示にグローバルベクトルを用いた新しい工夫をし、その有効性を原子分子、励起子分子のクーロン相互作用系及び少数核子系で確かめた。また、相関ガウス基底を最適化するために考案した確率論的変分法を、不安定核の束縛状態の構造計算に適用した。また、精密な変分計算が可能になったことで非束縛状態のエネルギーや幅などを理論的に決定できるようになり、^5He、^5Li、^6He、^9Be、^9Bなどの多くの例について、相互作用の強さを変数として運動量(波数)を解析接続するという手法の有効性を明らかにした。
^6Heはα+n+nの三体構造でよく理解できることは、高エネルギーのp+^6He散乱のグラウバー理論による弾性散乱の解析からはっきり示すことができた。その束縛機構について、三体構造以上の自由度、即ちα粒子がt+pまたはh+nに分極する効果に着目し、ハロー構造に特有な核表面付近での核子密度の正確な記述がハロー中性子との引カを増し、^6Heの結合エネルギーを増大させることを示した。
Beアイソトープの構造変化の研究の一環として、α+α+n+nの四体模型による^<10>Beの記述を試みた。関連するクラスターの部分系のエネルギーを再現する有効相互作用が不十分であり必ずしも実験との一致は良くないが、^6He+αの敷居値以下の準位が全てほぼ対応するところに得られることを確認した。
不安定核を用いた低エネルギー反応における特異な分子的共鳴の可能性を検討するために、^6He+αの散乱の解析を共鳴群の方法を従って行った。^6He+αの敷居値から3.7MeVの励起エネルギーのところに、幅の広い3^-の共鳴が現れることを予測した。また、共鳴群の方法をより質量数の大きな系にも適用できるように分析を進めた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Suzuki: "New Description of Orbital Motion with Arbitrary Angular Momenta" J.Phys.B: Atomic,Molecular and Optical Physics. 31. 31-48 (1998)
• [文献書誌] K.Varga: "Global Vector Representation of the Angular Motion of Few-particle Systems" Few-Body Systems. 24. 81-86 (1998)
• [文献書誌] R.G.Lovas: "Numerically Exact Description of Multicluster Bound States" Nuovo Cimento. A110. 907 (1998)
• [文献書誌] Y.Suzuki: "Stochastic Variational Methods in Few-body Systems" Nucl.Phys.A631. 91c-110c (1998)
• [文献書誌] Y.Suzuki: "Stochastic Variational Method for Light Unstable Nuclei" J.Phys.G: Nucl.Part.Phys.24. 1491-1497 (1998)
• [文献書誌] K.Fujimura: "Low-energy α+^6He Elastic Scattering with the Resonating Group Method" Phys.Rev.C59,2. 817-825 (1999)
• [文献書誌] K.Arai: "Structure of ^6He with an Extended Three-cluster Model" Phys.Rev.C59,3. (1999)
• [文献書誌] N.Tanaka: "Unbound States by Analytic Continuation in the Coupling Constant" Phys.Rev.C59,3. (1999)
• [文献書誌] S.Takami: "Tetrahedral and triangular deformations of Z=N nuclei in mass region A〜60-80" Phys.Lett.B431. 242-248 (1998)
• [文献書誌] S.Oryu: "^3He(d,p)^4He reaction calailation with three-body Faddeev equations" Nucl.Instrum.Methods Phys.Res.A402. 402-407 (1998)
• [文献書誌] T.Kaneko: "Simplified Resonating-group Method for Light-ion Scattering" Int.J.Mod.Phys.E7. 1-68 (1998)
• [文献書誌] T.Kaneko: "Study of α+ Nucleus Scattering with a Simplified Resorlating-group Method" Prog.Theor Phys.101,3(発表予定). (1999)
• [文献書誌] Yasuyuki Suzuki: "Stochastic Variational Approach to Quantum-Mechanical Fow-Body Problems" Springer Verlag, 310 (1998)