研究概要 |
少数粒子系の精密計算法としての相関ガウス基底を用いた確率論的変分法の応用を目的として、前年度から行っていた^6He、^<10>Beなどの束縛状態の構造の多クラスター模型による記述、軽いp殻核の低い励起エネルギーに現れる共鳴のエネルギーや幅などの共鳴パラメータの決定の研究を完成させた。さらに原子分子系への適用として、2個の電子、2個の陽電子からなるポジトロニウム分子の可能な束縛状態を計算した。D_<2d>対称性に従って8個の既約表現があり、その各々に対して軌道角運動量L=0,1,2についてエネルギーをもとめ、二つのポジトロニウムにわかれる閾値と比較して0^+(A_1),0^+(B_2),0^+(E),1^-(B_2)だけがクーロン相互作用のもとで束縛状態であることを確認した。それらが電子陽電子対の消滅で崩壊する確率を予言し、ポジトロニウム分子探索に有用な情報を与えた。 多クラスター模型によって不安定核を含む多くの核(^6He,^6Li,^7Li,^7Be,^8He,^8Li,^8B,^9Li,^9B,^9C,^<10>Be,^<10>C)の構造をこれまで研究してきた。その波動関数或は密度を高エネルギーの核反応に適用し反応機構をも同時に検討することを目指して、核子-核および核-核散乱のグラウバー振幅の完全計算の理論的定式化を行った。それを陽子-^6Heに適用し、^6Heの角分布と波動関数との相関から^6Heの大きさについて明確な決定を行った。また、弾性散乱断面積、反応断面積の計算に必要な衝突係数の関数としての位相を、光学近似以上の高精度で計算する簡単な処方せんを開発し実験データを解析した。鉛標的核のように電荷が大きくなったときのクーロン分解、核力とクーロン力の干渉、ラザフォード軌道の曲がりなどの効果が弾性散乱の角分布におよぼす影響を検討した。 簡単化された共鳴群法により^3Heと^<40>Ca,^<58>Ni,^<90>Zr,^<116>Sn,^<120>Sn,^<208>Pb標的との弾性散乱の解析を行った。
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