超対称標準模型には理論的に未解明の多くの任意パラメーターがあるが、それらは、超対称で階層的な構造をもつものと、超対称性の破れに結び付いた普遍的な構造を持つものとに大別される。前者に関しては、超弦理論のようなフレーバー対称性を持つ統一理論においては、相互作用項にFroggatt-Nielsen機構が働き、超対称なパラメーターに階層的構造が導かれると考えられる。ここで、重要なことは、統一理論ではクオークやレプトン以外の標準模型にはない余分な粒子が登場し、それらがクオークやレプトンと状態混合を起こす可能性があることである。この状態混合によって、クオークの小林・益川行列とその各要素の基本的な階層構造が導かれることを示した。さらに、レプトンの牧・中川・坂田行列も検討し、第2世代と第3世代のニュートリノ間の混合がかなり大きくなる事を示した。一方、超対称性の破れについては、いわゆるFCNC問題からゲージ伝達機構が好都合であり、重力による伝達機構ではフレーバー依存性が現れるという困難がある。これは、一見すると超弦理論と整合せず統一理論の枠組みを大きく変更しないといけないように見えるが、モジュライ場の特徴から反世代の物質場が伝達の役割をし、反世代場から世代場への間でゲージ伝達機構が働くとすれば解決できることを示した。さらに、統一理論の枠組みとエネルギー物理への道筋について、従来の摂動的な超弦理論になかった新しい可能性として、超弦の非摂動的動力学に基づいたD-brane描像の統一模型についても検討を行った。
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