1.昨年度作成した空間対称性に何の仮定もしない3次元座標空間表示による Cranked Hartree-Fock法の計算プログラムを拡張し、連続エネルギー状態も考慮して対相関を取り扱うCranked Hartree-Fock-Bogoliubov法の新しい計算プログラムを構築した。1年間を通じてこのプログラムの収束性、精度、計算効率の改良を積み重ねた。このプログラムを用いて、A=60-80領域のN【similar or equal】Z不安定核におけるエキゾチック変形の理論的探索を開始し、^<68>Se領域で空間反転対称性と軸対称性を同時に破ったY_<33>変形解を見出した。 2.1)超変形シェル構造形成の起源を半古典論の観点から理解すること、2)周期軌道の分岐現象を記述可能な半古典論を構築することを目的として、分岐点での停留位相近似の発散を避ける新しい半古典トレース公式を開発した。昨年度おこなったelliptic billiardモデルにおけるbutterfly orbitの分岐現象の解析を今年度は3次元に拡張し、spheroidal cavityモデルにおける赤道面2次元軌道から3次元周期軌道の分岐現象にともなう超変形シェル構造の形成機構を系統的に解析した。 3.大振幅集団運動の微視的理論として研究されてきた自己無撞着集団座標の方法(Selfconsistent Collective Coordinate Method)の基本方程式の解法としてはこれまで振幅展開法しか知られていなかったが、このたび、新しい解法として断熱近似法を開発した。この方法は従来のAdiabatic TDHF理論の困難を解決するとともに、変形共存現象や超変形状態からのトンネル崩壊など、異なるHF極小点にまたがる大振幅の集団運動の記述に、有効でpracticalな手段を与えるものと期待される。
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