研究概要 |
近年、量子ホール効果の研究を通して物性物理におけるゲージ場の役割、およびその背景にあるゲージ原理の重要性が広く認識されるようになった。実際、素粒子物理において考察されたスキルミオンのようなトポロジカルな励起が現実に2次元ホール電子系で観測されていることに見るように、低次元電子系はゲージ理論の実用の場としての様相を呈している。このような現状を踏まえながら,平成11年度には量子ホール効果の根幹に関わる諸問題をゲージ理論の考え方と手法を用いて研究した。その内容は以下の通りである. 1.量子ホール効果の消失現象:平成10年度に実施したホール試料中の電流分布に関する数値実験を通して、「量子ホール効果の消失」に対する重要なヒントが得られた。そこで、新たに数値実験を実行し、試料内部に於けるホール電場と不純物の競合という「準位内遷移」により量子ホール効果の消失現象に関する実験結果、特に臨界電場の大きさと磁場依存性が説明できることを検証した。さらに、臨界状況を支配する微視的な機構の解明を試みた。その成果は論文として発表し、また昨夏カナダで開催された2次元電子系の国際会議(EP2DS―13)にても報告した。 2.上記の研究に引き続き、(1)ホール伝導率プラトーに対する温度の効果、(2)縦方向伝導率のプラトーの消滅について理論的、および数値的な考察を進めた。現在、論文を準備中である。
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