平成10年度-13年度にわたって、ニュートリノ振動の実験データを用いた現象論的研究を行い、ニュートリノ質量行列のモデルをゲージ理論の枠内で検討した。 1.最近のデータをもとに、レプトンの混合行列の各成分の大きさをきめ、クォークの場合と比較できるようにした。現在の実験データを用いても、レプトンの混合行列の各成分の大きさは十分決まることが判明した。 2.太陽ニュートリノデータが大角度MSW解を示しているという実験グループの結果をもとに、フレーバー対称性のような世代構造を支配するモデルを研究した。偶然に支配されない質量行列の構造には、Z_2のような離散群があらたに必要とされる結論に至った。 3.S_3やO(3)対称性のような非アーベル群フレーバー対称性の可能性についてもこれまでの成果をもとに研究をすすめた。 4.SU(5)大統一理論の立場から、クォーク混合(CKM行列)とレプトン混合(MNS行列)の関係を定量的に議論し、bi-maximal混合(大角度が二つある混合行列)を得るための条件を繰り込み群の手法を用いて求めた。 5.ニュートリノと荷電レプトンの質量行列の可能なパターンを現象論的に分類した。その結果、かなり多くのパターンが可能であることが判明した。この研究は、モデルを作る場合に役にたつであろう。 6.ニュートリノ質量行列のモデルとμ→eγの分岐比の大きさの関係を明らかにした。 ニュートリノ質量が縮退型のとき、この分岐比の大きさは比較的小さく押さえられ実験の上限と矛盾しないことが判明した。
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