トポロカジル項を含んだCP(N-1)模型の力学的性質をモンテカルロシミュレーションの方法により研究した。具体的にはCP(2)、CP(3)模型については標準格子作用を用いて、CP(1)模型については固定点作用を用いてシミュレーションを行った。トポロジカル項を含む作用はユークリッド空間では複素作用になるため、通常のシミュレーションアルゴリズムとは異なる方法が必要である。ここではトポロジカル電荷分布P(Q)を実作用を用いて計算しフーリエ変換することにより分配関数を計算する。その結果、これらの模型について共通な性質として、強結合領域ではP(Q)はガウス型になり、弱結合領域ではそれらからずれる結果が得られた。前者はθ=πでの閉じこめ相から非閉じこめ相への一次相転移を表す。後者については、自由エネルギーF(θ)にθ≠π(≡θ_f)で特異な振る舞いが現れる。(θ>θ_fでF(θ)が平坦になる。)この後者の振る舞いは大きなサイズの格子に顕著に見られ、以前Schierholzによって指摘されていたことである。Schierholz達はこのことからθ≠πでの一次相転移の可能性と強い相互作用におけるstrongCPの問題の解決の可能性を示唆していた。本研究ではこの特異な振る舞いが分配関数Z(θ)の統計誤差に由来する可能性を明らかにした。いま、δPをP(Q)の典型的な誤差とするときVF(θ_f)〜-ln(δP)となることが言える(Vは格子の体積)が、これは、強結合に近い弱結合領域ではθ_f〜1/√<V>を導く。このV依存性はシミュレーションの結果と一致し、θ_fを一次相転移点と見なすことの危険性を意味している。弱結合領域での相転移の有無に関する最終的な結論を得るためには、他のアルゴリズムの開発またはシミュレーション以外の方法による相補的な研究が必要であると思われる。
|