3年間に渡った本研究の成果は主に3つに分けることが出来る。 1.Berezin量子化法と弦相関関数 可積分系として超弦理論を解析するという立場からMoyal量子化法を超対称場に拡張する試みを我々は平成6-8年の科研費課題研究(課題番号06835023)で行った。ただしMoyal量子化は平坦な位相空間でのみ可能な量子化法である。複数の超弦理論を統一的に記述するには、非平坦な時空での量子化が必要となるが、Berezinの量子化は最も明示的な非可換幾何学である。本研究ではBerezin量子化とMoyal量子化との差異を明らかにし、続いて弦模型そのものがBerezin量子化の汎関数積分によって自然に表示されることを示した。 2.離散幾何学の弦模型による実現 ソリトン方程式と微分幾何学の深い関係を離散可積分系に一般化したのが離散幾何学と呼ばれる新しい数学である。本研究では弦理論の相関関数を離散幾何学の言葉で書き直す試みを行い、離散幾何学における離散座標は弦理論の量子化された運動量に対応することを示した。 3.離散可積分系を特徴付ける新しい理論の展開 超弦理論は離散可積分系によって特徴付けられる、と言う本研究の立場からは、一般的な非線形系の中に離散可積分系を特徴付けること自体が超弦理論を理解する上で重要となる。特に離散Lotka-Volterra方程式に注目し、どのような機構によって非可積分な系が可積分系に移るのか、パラメーターを連続的に変化させることによって調べた。その結果、この系を特徴付けている代数的な2次方程式が在って、変数が周期的条件を満たすならば、その2次方程式の判別式が変数の多項式の完全平方になる時に限って、可積分性が成立することを明らかにした。
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