大気ニュートリノに関連した物理学

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10640280
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 安田 修 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (50183116)
• 研究分担者: 梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (40185773) ; 南方 久和 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00112475)
• キーワード: 大気ニュートリノ / ニュートリノ振動 / ニュートリノ質量 / レプトンのフレーバー混合

研究概要

まず理論の分野(安田・南方)では、スーパーカミオカンデ実験の大気ニュートリノのデータを、μニュートリノ→τニュートリノとμニュートリノ→不毛ニュートリノのどちらの可能性がより良いフィットを与えるか、三世代の枠組で解析した場合に二世代の場合の解析とだれだけ違う結論を与えるか、天頂角分布からニュートリノ振動が質量によるものかどうかを検討し、現在の統計では可能性を一つにしぼることはまだ難しいことを示した。又、来るべき長基線実験におけるCPの破れと物質効果の大小を調べ、一般に難しい長基線実験でのCPの破れの測定の仕方に関する工夫を提唱した。さらに宇宙論における観測からその存在が示唆されているホットダークマターについて、ニュートリノ質量がマヨラナ型である場合には太陽・大気ニュートリノ・CHOOZ・無ニュートリノ二重β崩壊の結果を組み合わせて、三世代のニュートリノが縮退して数eV程度の質量を持つシナリオはほとんど排除されることを示した。
一方、実験的方面(梶田)では、スーパーカミオカンデの包含事象と上向きミューオン事象、カミオカンデの上向きミューオン事象の事象の各データから得られるニュートリノ振動のパラメーターの許容範囲をそれぞれ求め、1998年6月の国際会議ニュートリノ98で発表した。これらの結果はすべて、混合が最大で質量二乗差がO0.0leV**2〜0.00leV**2の領域を含んでいてニュートリノ振動を強く示唆するものであり、世界中の物理学者のみならず、マスコミの間でも注目を集めることとなった。さらに、中性カレントの事象と電子的事象の比を取って不毛ニュートリノが関与しているかどうかの検討等も行ったが、原子核反応の断面積の不定性からはつきりしたことを言う所に至っていない。
全体的に今年度の我々の研究は、理論実験ともに非常に収穫の多いものであった。

研究成果

• [文献書誌] R.Foot,C.N.Leung,O.yasuda: "Atmospheric neutrino tests of neutrino oscillation mechanisms" Physics Letters. B443・1-4. 185-190 (1998)
• [文献書誌] O.yasuda: "Three flavor neutrino oscillation analysis of the Superkamiokande atmospheric neutrino data" Physical Review. D58・9. 091301-1-091301-5 (1998)
• [文献書誌] R.Foot,R.R.Volkas,O.yasuda: "Confronting solutions to the atmospheric neutrino anomaly in volving large angle Vμ→Ve oscillation with Superkamiokande and CHOOZ" Physical Letters. B443・1-2. 82-87 (1998)
• [文献書誌] R.Foot,R.R.Volkas,O.yasuda: "Comparing and contrasting the Vμ→Vτ and Vμ→Vs solution to the atmospheric neutrino problem with Superkamiokande data" Physical Review. D58・1. 013006-1-013006-9 (1998)
• [文献書誌] H.Minakata,O.yasuda: "Dark matter neutrinos must come with degenerate masses" Nuclear Physics. B523・3. 597-610 (1998)
• [文献書誌] H.Minakata,H.Nunokawa: "CP violation VS matter effect in long baseline neutrino oscillation experiments" Physical Review. D57・7. 4403-4417 (1998)
• [文献書誌] Superkamiokande collaboration(T.Kajita et al): "Evidence for oscillation of atmospheric neutrinos" Physical Review Letters. 81・8. 1562-1567-L618 (1998)
• [文献書誌] kamiokande collaboration(T.Kajita et al): "Measurement of the flux and zenith angle distribution of upward through going muons in Kamiokande II+III" Physical Review Letters. 81・10. 2016-2019 (1998)
• [文献書誌] Superkamiokande collaboration(T.Kajita et al): "Study of the atmospheric neutrino flux in the multi-CreV energy range" Physical Letters. B436・1-2. 33-41 (1998)
• [文献書誌] Superkamiokande collaboration(T.Kajita et al): "Measurement of a small muon-neutrino/electron-neutrino ratio" Physical Letters. B433・1-2. 9-18 (1998)