本研究の目的は、大気ニュートリノフラックスの精密計算を行い、水チェレンコフ光を用いた実験によりニュートリノの質量2乗の差と混合角を決定することにある。研究期間の間に得られた成果は、以下の通りである。 (1)ニュートリノフラックスの3次元計算を行った。これは、一次宇宙線が地球大気との衝突およびそれに伴って作られる粒子の崩壊を3次元的に計算することを意味する。一方、従来のものは一次元計算と呼ばれ、一次宇宙線の方向と大気との衝突による生成粒子の方向とを同一と仮定して計算が行われた。2つの計算結果を比較してみると、両者は非常に良く似ていた。これは、1次元近似が良い近似であることを意味している。両者の大きな違いは水平方向から侵入する低エネルギーニュートリノフラックスに現れた。すなわち、3次元計算では、水平方向から来るニュートリノの増大がニュートリノエネルギーが1GeVまで見られた。これは、一次宇宙線が衝突してニュートリノが作られる大気の層の厚さが有限であることに起因する。 (2)ニュートリノが地球内部を通過する場合の共鳴効果を3フレーバーで1つの質量2乗の差が大きい場合について系統的に調べた。このようなモデルは現実に近いと考えられるが、そこでは共鳴は3つのパラメータで決定される。すなわち、ニュートリノの天頂角、Δm^2/E、混合角θ_3である。我々は、共鳴が起こる3つ組の値を数値計算でもとめ、混合角θ_3決定の可能性について議論した。
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