研究概要 |
研究計画に基づき,以下の研究を行った。 1. ^<100>Mo+^<100>Mo,^<100>Mo+^<110>Pd,^<110>Pd+^<110>Pd等で見られるFusion hindranceの現象を,3次元ランジュバン方程式で取り扱った。入射・標的核が接触する点から出発して,角運動量を取り入れ融合断面積を求めた。融合のために必要な入射エネルギーを評価し,実験データから導出された結果とよい一致を得た。 2. 上述の系での実際の観測量は,融合により形成された複合核が蒸発残留核となる断面積であり,これを得るには融合後に起こる分裂と粒子放出との競合を取り扱わなければならない。統計模型では分裂障壁が0に近くなったり,障壁がなくなった場合,分裂幅を正しく計算できないので,スモルコフスキー方程式を用い,分裂障壁の小さい場合の分裂幅のふるまいがアレニウス因子からどのようにずれるかを調べた。 3. 融合過程では,核力が有限の到達距離を持つことから,入射・標的核の接触以前にも原子核の励起は起こり,これにより相対運動エネルギーが原子核の内部エネルギーに散逸する。この効果を調べるため,Proximity模型とGross-Kallinowski模型という二つの模型を用いて,接近過程での相対エネルギーの散逸の程度を調べた。 4. 質量非対称な入射チャネルによる超重元素合成の動力学を3次元散逸動力学模型で研究した。この模型は,融合過程に3次元ランジュバン方程式を,その後の分裂・粒子放出の競合過程に1次元スモルコフスキー方程式を適用するものである。入射チャネルの質量非対称度により,Fusion hindranceの大きさや入射クーロン障壁ぎりぎりで融合したときの励起エネルギーが変化し,入射系の選択が非常に重要であることがわかった。
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