研究概要 |
研究計画に基づき,以下の研究を行った。 1.質量非対称な入射チャネルによる超重元素合成の動力学を3次元散逸動力学模型で研究した。本年は,超重元素合成の新実験が相次ぎ,特にロシアDubna原子核反応研究所の^<48>Ca+^<244>Pu反応の結果は我々の予想値に近いものであった。さらに,アメリカLawrence Berkeley研究所の低励起エネルギーでの実験に対応するため,殻補正エネルギーを融合段階から取り入れた計算を開始すると共に,粒子放出の計算における準位密度パラメータの殻補正による励起エネルギー依存性などを改良した。 2.多くの入射・標的核の組み合わせに対して蒸発残留核断面積の系統性を調べるため,動力学計算の結果を入射エネルギーや非対称度,複合核の原子番号・質量数によってパラメータフィットしこれをもとに,最適な入射・標的核の組み合わせと最適エネルギーを予想するという試みを開始した。 3.融合後に起こる分裂と粒子放出との競合を取り扱う際に,通常用いられる統計模型では,分裂障壁が0に近くなった場合の分裂幅を正しく計算できず,超重元素合成にはそのままでは適用できない。そこで,フォッカープランク方程式に対するFirst Mean Passage Time(平均第一通過時間)の方法を用い,このような場合でも分裂幅を正しく計算できることを確かめ,これをカスケードコードに組み込んだ。 4.融合過程における,入射・標的核の接触以前の原子核励起が重核融合過程にもたらす影響を見るため,Proximity模型とGross-Kallinowski模型という二つの模型を用いて,接近過程での相対エネルギーの散逸の程度を調べ,さらに接触時の相対エネルギーの分散についても調べた。
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