昨年度に引き続き、高速MUSIC検出器及び性能比較のために用いた通常のMUSIC検出器による高エネルギー重イオンに対しての粒子識別テスト実験のデータ解析を行った。その結果、両方の検出器は共にガス層の厚さだけで決まる粒子識別分解能を持つことが解った。言い換えると、回路のノイズや検出器の特性はほとんど影響がなく、ガス層の厚さを変えるだけで必要な分解能が得られるということである。さらに、高速MUSICの分解能は、テスト実験での最高計数率である150kcpsまでは全く変化しないという非常に優れた計数率特性を持っていることも解った。このようにして不安定核ビームのモニターとして十分に実用に耐える検出器を開発することが出来た。これらの研究成果については秋の物理学会において発表を行った。本年度後半には、ドイツのGSI研究所を訪れ、理化学研究所が中心となって行っている重イオン実験に参加すると共に、この実験で使っているMUSIC検出器を開発したミュンヘン大学のグループと、お互いの検出器についての議論を行った。このグループは通常のMUSICを用いて特殊なガスや回路を工夫することで高速動作を実現しているが、これらの工夫と本研究で行った電極構造の改良とを組み合わせればさらに高速のMUSIC検出器が可能になると考えられる。
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