銀河団中における高温プラズマの諸性質について、今年度は次の2項目についての研究を行った。 (1)銀河団中の電子プラズマの偏極光子によるSunyaev-Zel'dovich効果の研究 2.7Kの宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)が銀河団中の電子ガスによって散乱されることにより、そのスペクトラムが歪められることが知られている。これがSunyaev-Zel'dovich効果である。平成11年度は、偏極したCMB光子の偏極率の精密計算をおこなった。特に電子の相対論的運動学を考慮した解析的表式を導くことに成功した。これにより、将来の偏極率の精密観測に重要な寄与をすると考えられる。その結果は米国天文学会誌Astrophysical Journalに掲載が決定された。 (2)銀河団中の高温プラズマにおける熱的制動輻射過程の研究 銀河団の内部から放出されるX線が観測されており、そのメカニズムとして高温状態のプラズマ中における電子-イオンによる熱的制動輻射および電子-電子による熱的制動輻射がよく知られている。平成10年度に熱制動輻射率の相対論的な精密計算を行った。平成11年度は熱制動輻射率のフィッティング式を求めた。その結果は米国天文学会誌Astrophysical Journalに掲載が決定された。
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