次のような研究を実行した。 1. 量子重力およびストリング理論における微視的な構造と巨視的なふるまいの関係を明らかにした。まず2+ε次元のアインシュタイン理論や力学的単体分割その他の、さまざまな量子重力の微視的模型を解析的および数値的に研究し、それが巨視的なスケールでどのように見えるかを分析した。 2. また、ストリング理論の立場からは、最近当研究代表者らによって開発されたトランスファー行列および新しいタイプの弦の場の理論をさらに拡張して、臨界弦にも適用できるものにし、上に述べたような局所場の理論としての量子重力との関連をみとおしの良いものにした。 3. ストリング理論の非摂動効果を分析するもう一つの有力な方法として臨界弦を表すマトリックス模型(IIBマトリックス模型)を調べた。これを数値的、あるいは解析的に解くことによって、現実の世界が本当にストリング理論によって記述されているかを調べている。 4. 以上の結果を総合して、弦理論の本質となる対称性、その他の原理を見抜き、最終的な弦理論の構成的定義に迫るべく努力している。 具体的な研究方法としては、数値的および解析的な考察を進める一方で、研究会、セミナーなどを通じて、場の理論の専門家のみならず、物性理論、宇宙論、数理物理などの専門家たちと、幅広く交流を行なうことによって、問題点を解決しつつある。
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