次の4項目にわたる研究成果が得られた。 1.e^+e^-→W^+W^-過程における超対称性模型輻射効果の研究:散乱振幅のBRS不変性を用いたループ計算の検証法を開発し、クォーク、レプトンの超対称性パートナーの寄与と、ゲージ、ヒッグスの超対称性パートナーの寄与の計算を完成させた。これらの研究は、将来のリニアコライダー実験のための信頼できる標準となる。 2.超対称性模型輻射効果によるCP非保存現象の研究:超対称性標準模型に現れるCP非保存の位相の効果を取り入れた有効ヒッグスポテンシャルを用いて、ヒッグスポソンの崩壊分岐比を検討し、LHCにおけるヒッグスボソン検出実験への影響を調べた。 3.コライダーにおけるヒッグスボソン結合精密測定に関する研究:超対称性模型の輻射効果は、ヒッグスボソン結合に大きな効果をもたらすため、将来のコライダーにおけるヒッグス結合の精密測定の可能性を検討した。LHCでヒッグスボソンのタウレプトン結合を測定する方法を提案、将来のリニアコライダーでの系統的な精密測定法の提案と測定精度の定量的評価、光子リニアコライダーを用いたCP非保存結合の測定法の提案、光子リニアコライダーによる理論物理探索の総合報告を発表した。 4.電弱精密測定とミューオン異常磁気能率による超対称性模型に対する制限の研究:電弱精密実験による超対称性模型輻射効果に対する制限の系統的調査を実施し、ミューオン異常磁気能率の標準模型からのずれが超対称性理論のシグナルである場合の超対称性模型パラメータへの制限を求めた。ミューオン異常磁気能率に対する標準模型の予言を再検討した。
|