カーボンナノチューブ先端からの電界放出現象の実用化やナノチューブ先端に固有な電子状態の理論予測などナノチューブ先端の電子状態に注目が集まっている。しかし、実験的にはまだ明らかにされていない。われわれは、これまで開発してきた透過型高エネルギー分解能電子エネルギー損失電子顕微鏡の空間分解能・操作性・検出効率を向上させる事によりナノチューブ一本一本の先端からの微弱信号を検出して電子状態を明らかにするため、 ・ 特殊絞り(3μmφ)の導入により、空間分解能を180nmφ→110nmφへと向上 ・ 超高感度ICCDカメラを導入し、ナノチューブ一本一本の同定作業の効率向上等の改造を行った。この装置を、最近見出された窒化ホウ素(BN)ナノチューブの電子構造の角析に試験的に応用し、BNチューブの電子構造が六方晶BNに比べて ・ 六方晶BNのバンドギャップ(約6eV)に対応する遷移エネルギーが、約leV小さく5eVであった ・ 新たなバンド間遷移が、4eVに観測された のような特徴を持つことを世界で初めて明らかにした。また、検出効率向上させた検出系を用いた予備実験で、ナノチューブの胴部分から得たスペクトルと先端から得たスペクトルに差があることが明らかになった。
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