研究概要 |
まず、次元を制御した鉛ハロゲン系ペロブスカイト化合物(3次元:CH_3NH_3Pb(Cl_<1-x>Br_x)_3,2次元:(C_mH_<2m+1>NH_3)_2(CH_3NH_3)_<n-1>Pb_nX_<3n+1>(m=4,6,8、n=1,2、X:Cl,I),1次元:C_5H_<10>NH_2PbX_3(X:I,Br),0次元:(CH_3NH_3)_4PbI_62H_2O)の単結晶を溶液法によって作製した。これにより、構成要素である(PbX_6)^<4->(X:Cl,I,Br)の連結状態を0次元から3次元まで変化させた試料が準備できた。これらの試料を用いて、(1)ラマン散乱および赤外吸収測定による振動モード解析,(2)光吸収、光伝導、発光測定による電子状態の解析(2)相転移点近傍の熱解析、によって鉛ハロゲン系ペロブスカイト化合物の構造相転移現象における次元性を系統的に調べた。3,2,1次元系試料では、絶縁体バリア部として働く有機分子(アルキルアンモニウム基)の回転・配向の秩序化に伴う逐次構造相転移のカイネティクスを振動モード解析および熱解析によって明らかにし、この物質系の相転移に見られる共通の特徴と系統性を見出した(日本物理学会1998年4月(千葉),1998年9月(沖縄),1999年3月(広島)で発表)。特に、1次元系試料では初めて逐次構造相転移(4相)の存在を明らかにし、構造相転移における電子状態の変化についても興味ある結果を得た。また、高圧下ラマン散乱実験より1次元系試料の圧力誘起相転移を確認した。一方、0次元系試料ではこのような逐次構造相転移は観測されなかったが、ある条件下で0次元から3次元への構造変化が確認できた。以上により、本研究の主題である「光励起下および高圧下での相転移現象全般を多体効果による協力現象の次元依存性として考察する」ための足がかりが確立した。
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