研究概要 |
構成要素である(PbX_6)^<4-> (X:C1,I,Br)の連結状態を0次元から3次元まで次元制御した鉛ハロゲン系ペロフスカイト化合物の単結晶(平成10年度に作製)において、ラマン散乱測定(特に準弾性光散乱と低波数ラマン散乱)、発光・光吸収・光伝導測定、高圧光物性測定によってこの物質系の相転移現象を系統性に調べた。1次元系試料においては、温度変化に伴う3つの逐次構造相転移に加えて、高圧下ラマン散乱実験より得られた有機分子内振動モードおよびフォノンモードの圧力依存性から、有機分子の回転・配向秩序化を伴う圧力誘起構造相転移が存在することを初めて明らかにした(日本物理学会1999年9月(盛岡))。また、構造相転移における電子状態の変化を光伝導測定によって調べた。2次元系試料においては、逐次構造相転移における有機分子の回転・配向のカイネティクスを準弾性光散乱によって調べ、低波数ラマン散乱及び高波数域ラマン散乱スペクトルの結果とも合わせて構造相転移の有機分子鎖長依存性(特に、鉛ハロゲン層と有機分子との力学的相互作用)を議論した(日本物理学会2000年3月(大阪))。さらに、25GPaまでの高圧下発光・光吸収測定により、圧力誘起電子状態転移によって10GPa近傍で励起子状態が完全に消失することを初めて見出した。この圧力誘起電子状態転移の有機分子鎖長依存性についての知見も得た。3次元系試料及び0次元系試料では、有機分子内振動モード、フォノンモード、準弾性光散乱モードの温度変化から有機分子の回転・配向状態を調べ、また、電子状態の変化を発光の温度依存性から明らかにした(日本物理学会1999年9月(盛岡)、2000年3月(大阪))。以上の結果を系統的に考察することにより、この物質系の相転移にみられる共通の特徴と次元依存性を検討できた。
|