研究概要 |
本研究の目的は、GaAs基板上へ族の異なるZnSe等を成長させる時生じる空孔化した界面構造層の形成機構と電子物性を解明することであり、本年度得られた知見は以下である。 1. (110)ZnSe/GaAs界面構造と初期吸着表面の光学的性質の解明: 全エネルギー計算から、(110)ZnSe/GaAs系では、ZnSe・GaAsのバックリング表面を接触した原子位置を取り、価電子不整効果を緩和して界面が安定に形成されることを示した。これは、空孔を発生し原子が大きく変位する(001)界面と比べて、(110)界面では急唆な界面が形成されるという実験事実をよく説明する。さらにこの構造において計算された界面のRDスペクトルは実験と一致する。一方、アニオン表面へ初期吸着したカチオン原子の非占有ダングリングボンドは他の軌道と幾何的に直交する。これは、初期吸着カチオン原子が光学スペクトルで観測されにくいことを示唆する。 2. 空孔化合物層の安定性と光学的性質の解明: 空孔面を含む層状In_2Se_3は多種の積層を示すが、(001)GaAs表面上にアニオン過剰で(111)方向へエビ成長させた場合、基板との歪エネルギーを緩和させるためにウルツ鉱構造で3倍周期(ACBACB)に成長することを示した。この成長層では見られる吸収端の光伝導スペクトル異方性は、空孔近接Seのダングリングボンドに起因することが明らかになった。 3. ダイマー構造を取り入れたモンテカルロシミュレーションの開発: 最近のIto等の研究(1998,P,R.L.)により、化合物半導体の成長においてアニオンダイマーの果たす役割が重要であることがわかってきたので、当初の計画を変更したプログラムを現在開発中である。
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