研究概要 |
fおよびd電子系の共鳴X線発光(RXES)の理論を進め、遷移金属化合物のRXESにおけるクラスターサイズ依存性、希土類化合物のRXESにおける励起過程依存性と偏光依存性の計算において顕著な成果をあげた。前者に関しては,大きなクラスターによるRXESのモデル計算をおこない、遷移金属化合物における遷移元素の2p内殻励起RXESでは、共鳴励起された3d電子の遍歴性が本質的に重要であることを示す顕著な結果を得た。この効果は,光電子分光やX線吸収分光よりもRXESにおいてより敏感にスペクトル形状に反映され,3d電子の遍歴性と局在性をしらべる手段としてRXESが有効であることを示唆している。また,酸化物高温超伝導体の銅の1s電子励起RXESの中間状態において,内殻正孔ポテンシャルが価電子により非局所遮蔽を受ける効果が重要であることを,大きなクラスターを用いた数値計算により明らかにした。これらは,最近行われた精密な実験結果をよく説明するものである。さらに後者に関しては,希土類化合物の2p内殻電子の双極子励起と四重極子励起に伴うRXESを系統的に計算し,X線吸収分光では明確に分離できない両者の寄与をそれぞれ明らかにした。強磁性希土類物質における円偏光励起に対するX線吸収とRXESの二色性についての計算も進行中である。これらの成果は国際的に高い評価を受け,1998年秋に米国Long Islandとわが国の神戸で開かれた二つの国際会議において招待講演として発表された。
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