二酸化チタンの3種類の同質多形のうち、低温相に属するアナターゼはバンドギャップも大きく、光触媒作用が大きいことで注目されている。本研究では、アナターゼ単結晶を塩化アンモニウムを輸送剤としたChemical Vapor Transport法で作成した。得られた青色透明の結晶を1MPaの酸素圧下で熱処理すると黄色、ついで無色透明になった。後者は酸素欠陥のほとんどない試料で、完全絶縁体であった。酸素欠陥の制御は、酸素欠陥を水素還元処理によって生成する方法をとった。水素還元による酸素欠陥量は処理温度、雰囲気の水素濃度によることが分かった。酸素欠陥は光学的には約3.0eVに吸収帯を生じ、さらに水素処理を続けるとこの吸収帯に替わって、2.0eVに幅広い吸収帯が現れた。発光は2.2eVにピークを持つ幅広いバンドがある。これらは3つの発光帯(1.95、2.1、2.4eV)に分解できる。励起スペクトルから、欠陥による3.0eVのバンドを励起すると、最低エネルギーの発光帯(1.95eV)のみが現れることが分かった。 ダイヤモンドアンビルセルを用いて圧力下での物性変化を調べた。ラマン散乱から4.3±0.3GPaで相転移が起こることを見出した。吸収端もこの圧力で飛びを示した。なお、高圧相は圧力を常圧に戻しても安定に存在した。この高圧相が単結晶として常圧、常温で得られたので今後、構造解析を行う予定である。
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