研究概要 |
化合物半導体ZnP_2は励起子の研究に最も適した物質の一つである。この結晶における励起子のフォノン散乱による無輻射緩和過程を探ることを目的として,昨年度の予備測定に引き続き本年度は,光カロリメトリー分光(PCS)スペクトルと励起子発光の励起スペクトルの同時測定を実施した。得られた主な結果は以下の通りである。 1.一重項1s縦波励起子エネルギー以上の光励起下では吸収された光が熱に変わる効率はほぼ一定であり,試料表面での反射ロスによる補正と絶対熱発生量から求めた熱変換効率は約80%であることが分かった。 2.1s励起子の反射バンド内では発光,熱発生とも減少する。このことは,この領域では反射・発光・熱発生以外に共鳴レーリー散乱のような他の光学過程も一定の役割を担っている事を示している。 3.各励起エネルギーにおける熱発生量と1s励起子発光強度の比を調べた。このような比を取ることは,割り算することにより反射やレーリー散乱の効果がキャンセルされるという利点を持つ。上記の比は励起子の各共鳴域(n=1,2,3,4)で増大を示し,これらの領域では正味に結晶に吸収された光の内で発光に対する熱発生の比率が増加することを意味している。 4.三重項励起子に対するPCSスペクトルは,一定のバックグラウンドを除いて吸収スペクトルと良い対応を示し,光励起により生成された三重項励起が熱放出する効率は各準位でほぼ一定で有ることが分かった。 これらの結果の一部は日本物理学会や昨年8月に開催されたルミネッセンス国際会議で発表した。
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