研究概要 |
NiY,NiCo,Ni,RhPdの各金属触媒を用いて、直径分布の単なる単層カーボンナノチューブ(Single-Walled carbon Nano Tube:SWNT)を作製し、光吸収スペクトル及び共鳴ラマン散乱スペクトルを測定した。 ナノチューブを薄膜化して測定した光吸収では、近赤外から可視域において、ナノチューブ固有の吸収構造を見いだし、それが直径分布の変化とともに大きく変化する事を明らかにした。この吸収構造が1次元van Hove singularityにより発散した、鏡映関係のπ電子状態密度間の光学遷移であるとすると、SWNTの直径の変化と吸収構造の変化をうまく説明出来ることがわかった。この解釈によれば、赤外域に渡って観測される3つの吸収ピークの、低エネルギー側の2つのピークは半導体のSWNT、3番目のピークは金属のSWNTの吸収であることになる。これにより、試料に含まれるSWNTの金属相と半導体相のおおよその比率がわかることになり、試料評価に新たな手法を見いだしたことになる。 より詳細な議論のために、同試料について、共鳴ラマン散乱を測定した。その結果、金属SWNTの吸収ピークに相当する波長でのラマン散乱の測定すると、金属相のチューブが選択的に共鳴し、1600cm^<-1>付近のtangential modeが低波数にシフトするとともに、非常にブロードで非対称になることが明らかになった。このスペクトルは、Fano型のline shapeでフィットできることから、伝導電子による干渉効果であると結論した。直径分布が変化すると、金属相の吸収波長が変化するが、同様にFano型のスペクトルを得る波長も変化する。これにより、吸収測定の結果とラマンの結果が矛盾無く説明でき、ナノチューブの電子状態は、zone foldingで基本的に説明可能であることが明かとなった。
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