前々年度及び前年度に引続き、時間発展演算子のチェビシェフ多項式展開法および実空間数値微分法を用いて、多電子系の基底及び任意の励起電子状態を、電子相関に関して近似無しに数値計算する事を試みた。電子間のクーロン斥力相互作用の特異性に起因する多電子波動関数についてのカスプ条件を波動関数に課す代わりに、電子間クーロン斥力相互作用の特異性を除くようなパラメタを導入し、パラメタの変化が計算結果にどの様に影響するかを調べた。特異性が回復する方向へパラメタに関して外挿した計算値がカスプ条件を満たす計算値であるが、ある範囲の値のパラメタに対しては計算値が外挿値に近い定常値を取るため、必ずしも外挿する必要は無いことが分かった。実空間の刻みが充分小さければこの様な置き換え操作は勿論不要になる。この方法を用いて2電子系の基底・励起状態の全エネルギーを、電子間クーロン斥力の強さを変えて計算し、非局在状態から局在状態にいたる範囲の電子状態を得、実験との良好な一致を見た。密度汎関数法の一体状態に対するKohn-Sham方程式を拡張する試みとして、全電子の波動関数が2電子波動関数の積の和の形に書けているとした場合に、2電子波動関数がどの様な方程式を満たすべきかを調べ、時間発展演算子法により数値計算可能かどうかを検討した。
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