1.遷移金属K発光磁気円二色性 遷移金属のK発光では内殻励起時に左右偏光に対する遷移確率の違いがないため、吸収の場合と同じく吸収端近傍以外では磁気円二色性は期待できない。今回純Co試料を用いてK発光磁気円二色性測定を行い、吸収端近傍での吸収磁気円二色性の起源を実験的に厳密に特定することに成功した。 2.Gd3d_<5/2>2p_<3/2>発光磁気円二色性のGdL_2吸収端でのボイトラー・ファノ共鳴の発見 強磁性Gd-CoアモルファスのGd3d_<5/2>2p_<3/2>発光磁気円二色性測定をGdL_2吸収端近傍で行い、(1)GdL_2吸収極大よりもわずかに低い入射光エネルギーでGd3d_<5/2>2p_<3/2>発光強度が減少する、(2)同じエネルギー位置でGd3d_<5/2>2p_<3/2>発光磁気円二色性強度が減少する、ことを発見した。これらは連続状態と励起電子の強い干渉効果であるボイトラー・ファノ共鳴で説明が可能である。特にボイトラー・ファノ共鳴が円偏光依存性を持つことは、様々な現象時に現れるボイトラー・ファノ共鳴の中でも初めての発見である。 3.R-Co(R:希土類金属)アモルファスでの希土類金属L発光磁気円二色性 強磁性希土類金属化合物R-Co(R:希土類金属)アモルファス試料を用いて、希土類金属を連続的に変えた時の希土類金属L発光の磁気円二色性測定を行ない、(1)軽希土類と重希土類で磁気円二色性スペクトルが反転する、(2)軽希土類では2種類・重希土類では1種類の四極子遷移が存在する、(3)軽希土類の2種の四極子の磁気円二色性はそれぞれ符号が反対になる、(4)軽希土類の2種の四極子遷移の起こるエネルギーは、L3吸収端とL2吸収端とで異なる(実験的には異なって見える)、等の知見を得た。上記結果は理論的に予測されていたものであり、本研究で理論の検証が行えた。
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