本研究では、非縮退電荷密度波(CDW)モデルを用いて、第一励起状態の緩和状態(confined soliton and anti-soliton)から基底状態への無輻射遷移の確率の評価を行った。 研究全体を通して問題となったのは、どのような座標を確率に影響するとして取り込むか、ということで、1年目においては、それを、ソリトン・反ソリトン間距離のみを用いて、実際の計算を行った。その結果分かったのは、確率が極めて小さくなり、取り込むモードの数が明らかに不十分であるということである。より詳しい解析の結果、波数が零に近い「長波長」フォノンが確率の増大に深く関わっている事が分かり、2年目においては、これらのモード(本質的に複数)を以下に取り込むかを課題とした。 そのための第1の方法として、第1自由度としては、前述のソリトン・反ソリトン間距離、そして、第2の自由度としては、各ソリトンの付近に局在した歪みの振幅とする。ここで、その歪みは、K=0の波数を中心としており、まず、この方法で前述の予測を確かめた。結果的に、確率は確かに飛躍的に増大し、励起状態の寿命として、例えば、ある場合に、8.6ns程度の値を得た。(1自由度の場合は、12ms程度だった。) 次に、第1自由度は上記と同じで、第2自由度以降を、K=0のcosine型偶モードから、波数の小さい順番で導入した。なお、この場合、異なる波数のモードは、ほぼ独立に扱えるので、第2自由度以降のモードの寄与は、お互いに干渉が無く、加算的になる。結果として、200サイトの系において、25個程度のモードの導入で、確率はほぼ飽和しており、40個程度の導入で、寿命として、110ps程度の値を得た。これは、格子を古典的に扱ったシミュレーションの結果である80psとかなり良い一致である。
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