研究概要 |
局在的な磁性電子が遍歴的電子と混成し,低温で遍歴・局在の二重性格を帯びて質量増強し,準粒子となって重い電子状態が現わす物性現象が「強相関伝導系の物理」である.しかし,セリウム化合物などの4f電子系では,遍歴か局在の両極端に安定化する傾向にあり,二重性の研究対象としては必ずしも適当ではない.一方,ウラン化合物の5f電子は起点から二重性格をもっていて,本研究課題に絶好な研究対象でありながら,5f電子系の二重性格を統一的に理解するには至っていない.そのため,典型的なウラン化合物を開発し,5f電子系の遍歴性や超伝導状態を発生させて,5fの二重性が関与する物性現象を研究する必要がある. 本研究では,我々が最初に物質探索し単結晶化に成功したウラン化合物U_3Pd_<20>Si_6を中心に,高純度単結晶を育成し,ウラン化合物に現れる5f電子系の局在・遍歴の二重性格が関わる量子相転移と揺らぎとの相関や非フェルミ液体的現象の発生機構を解明することを目的として研究を行った.本研究では.東北大学金属材料研究所の研究施設を活用し,従来の研究実績を踏まえ,U_3Pd_<20>Si_6の単結晶を育成し,低温物性を研究した.主な成果は (1) U_3Pd_<20>Si_6の単結晶育成による静的な物性評価を行い,局在性の高い磁性状態を開発,中性子散乱実験や超音波吸収の研究を行い,特異な相転移を発見した. (2) 希土類三元系R_3Pd_<20>Ge_6の純良単結晶の育成に成功し,フェルミ面の観測に成功した. その他,ウラン三元系化合物の新物質探索にも成功しており,研究実績は順調に挙がっている.
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